教員紹介

川中 健太郎

川中 健太郎

(カワナカ ケンタロウ)

KAWANAKA KENTARO

教授

主な担当科目

スポーツ栄養学
運動栄養学
スポーツ生化学
分子スポーツ栄養学特論
スポーツ科学演習

部活動

自己紹介・メッセージ

アスリート(スポーツ選手)の太く逞しく発達した筋肉はパワーとスタミナの源であり、日常の運動トレーニングと適切な食事管理の賜物です。一方、運動不足の現代人の筋肉は痩せ衰えて栄養素を代謝する能力が低下しています。そのために、体力が低下するとともに、食事で摂取した栄養素が血液中にだぶつき糖尿病などの生活習慣病が引き起こされます。
私たちの研究チームは“運動と食事による筋肉づくり”を念頭に以下のような研究を行っています。一緒に新しいスポーツ栄養学に挑戦しましょう。特に大学院生、ポスドクを募集しています。

1) エネルギー付加は筋肉づくりに有効か?
アスリートの間では筋肉づくり(増量)のために十分なタンパク質を摂取するとともに、1日に1000kcal程度のエネルギーを付加する方法が実践されています。しかし、このメソッドを支持する科学的知見はなく、単に体脂肪が増加するだけとの考え方もあります。エネルギーを付加する増量方法は本当に有効なのか? もっと効果的な方法はないのか? ヒトや実験動物を用いて検証しています。

2) 卵白タンパク質に由来する“筋肉づくりに有効な新規成分”
我々は、卵白タンパク質が筋肉づくり(増量)に有効であるとの知見を見出しており、現在、実験動物を用いて、卵白タンパク質に由来する“筋肉づくりに有効な新規成分”の探索にチャレンジしています。メタボローム解析という分析手段を用います。

3) タンパク質摂取が筋肉づくりを促進する分子機構
筋肉づくり(増量)のためにはタンパク質を多めに摂取することが推奨されています。タンパク質を多めに摂取することで、筋肉づくり(増量)が促進される仕組みについて、筋肉内に存在するリボソーム(筋タンパク質を合成する細胞内小器官)の変化に着目して調べています。実験動物を用います。

4) タンパク質摂取が身体に及ぼす影響(筋肉づくり以外)
タンパク質の摂取量の増減は筋量以外にも様々な影響をもたらす可能性があります。現在、筋肉内に存在するミトコンドリア(エネルギーを産生する細胞内小器官で持久能力の決め手となる)や腸内細菌叢への影響について実験動物を用いて検証しています。タンパク質摂取量を増やすことのメリット・デメリットに関するエビデンスを集積することが目的です。

5) 「立つ」「歩く」「伸ばす(ストレッチング)」が筋肉の糖代謝能力に影響を及ぼす分子機序 
「ジョギングやランニング」などの活発な運動によって筋肉を“激しく”動かすと、糖代謝能力が向上します。これによって筋グリコーゲン貯蔵量が増加し、運動能力向上に繋がります。一方、「立つ」「歩く」といった日常的身体活動によって筋肉に弱い負荷を加え続ける、あるいは、「ストレッチング」によって筋肉を伸ばすだけでも糖代謝能力を維持できることがわかってきました。これは糖尿病の予防に重要です。そして、「立つ」「歩く」「伸ばす(ストレッチング)」は、「ジョギングやランニング」とは異なる仕組みによって筋肉の糖代謝能力を調節している可能性があります。我々は、「立つ」「歩く」「伸ばす(ストレッチング)」の仕組みについてTXNIP(チオレドキシン相互作用タンパク質)という遺伝子に着目した検証を行っています。

6) 腸内細菌
我々の大腸には100兆個の腸内細菌(人間の細胞の数である60兆個よりも多く、重さにして約1.5kg)が生態系をつくって住んでいます。我々が食事として摂取した栄養素は腸内細菌の餌にもなっています。我々が食事を摂取しているのは、自分自身の身体のためだけではなくて、共生している腸内細菌のためでもあります。この腸内細菌の種類は約4000種類にも及び、ぞれぞれの細菌の数の変化と、お互いのバランスは我々の健康状態に劇的な影響を及ぼします(肥満、糖尿病、ガン、うつ病、認知症などの発症とも関係あり)。
糞便には腸内細菌の死骸が混じっており、それを調べれば腸内細菌の状態(腸内細菌叢)を評価できます。我々は食事と運動が腸内細菌叢に及ぼす影響について実験動物を用いて調べています。また、スポーツ選手の腸内細菌叢を調べることが、アスリートのコンディション指標に役立つ可能性を探っています。

トピック

【著書】 『運動と疲労の科学』 大修館書店 第11章 「糖質と疲労」を分担執筆 運動疲労とその回復に関する最先端の生理学的研究が網羅されています。大学院生、スポーツドクター、健康運動指導士、アスレティックトレーナーに役立ちます。

参考サイト